有害化学物質対策用の防護服素材の構造と特徴とは?
防護服とは「危険有害要因から身体を防護するために使用する衣服」の総称で、作業者が身体に傷を負ったり、健康障害が生じる恐れのある作業の際に着用する衣服です。
危険有害要因は化学物質、粉じん、冷熱等とさまざまありますが、今回は有害な粉じんや、液体・気体状の化学物質から身体を防護するためのディスポーザブルタイプの防護服の素材についてご紹介します。
有害な粉じん防護用の防護服素材とは?
アゼアスでは、石綿(アスベスト)や酸化アルミニウム(アルミナ)等、吸入すると人体に健康被害を及ぼす危険のある有害な粉じん防護用の防護服素材として、SMS不織布、フィルムラミネート不織布、デュポン™タイベック®の3種類を取り扱っています。
●SMS不織布:
ポリプロピレン(以下PP)メルトブロー不織布をPPスパンボンド不織布で挟み込んだ素材です。外側のPPスパンボンド層は、強固な耐摩耗性と、布のような手触り感を提供します。また、帯電防止加工が施されています。
※帯電防止加工は、静電気の発生等による障害を完全に除去するものではありません。
●フィルムラミネート不織布:
スパンボンド等の表面に薄いフィルム素材が貼り付けられています。多孔質フィルムラミネートは、透湿性とバリア性に優れています。
●デュポン™タイベック®:
タイベック®は、0.5~10ミクロンの高密度ポリエチレンの連続極細繊維に熱と圧力を加えて結合させた、デュポン社独自の特殊素材です。0.5ミクロン以上の微粒子に対して、優れたバリア性を発揮します。 また極細繊維が複雑に結合し、何層にも重なっているため、強い摺れ等で表面は損傷するものの、下層では影響は受けず、優れたバリア性を保つことができます。 また、帯電防止加工が施されており静電気による粉じんの付着を防ぎます。
今回ご紹介した3種類の素材の中で、防護服に要求されるバリア性・耐久性・快適性のバランスが良く、粉じんに対して高い防護性能を持っているのはタイベック®です。
タイベック®の特徴についてはぜひ動画でもご確認ください。
また、有害性がない粉じんに対する汚れ防止用途には、PP不織布製の簡易作業服も使用可能です。
有害な液体・気体状の化学物質防護用の防護服素材とは?
同じように見える防護服素材も、コーティングされている物質によりバリア性能に大きな違いがあります。ここでは、採用事例が多数ある3種類の素材をご紹介します。
●デュポン™タイケム®2000:
タイベック®にポリマーコーティングを施した2層構造の素材です。 多くの高濃度無機化学物質に対する耐透過性を持っています。 また、粒子の侵入をシャットアウトします。
●デュポン™タイケム®6000:
タイベック®にポリマーコーティングを施し、さらにバリアフィルムとポリマーコーティングをプラスした4層構造の素材です。 多くの有機化学物質および高濃度無機化学物質に対する耐透過性を持っています。 また、粒子の侵入をシャットアウトします。
●デュポン™タイケム®10000:
非ハロゲン系の特殊樹脂フィルム層で不織布をサンドイッチした構造の素材です。 これにより引っ張りおよび引裂きに対する優れた強度を持っています。 260種類におよぶ危険な化学物質に対する透過試験で、すべてに対して8時間以上透過しないことが証明されています。
液体化学物質防護用:タイケム®2000/6000
液体・気体化学物質防護用:タイケム®10000
多くの化学物質は、「浸透」と「透過」という現象を引き起こし、作業者の健康を蝕む危険性があります。「浸透」とは、縫い目やファスナー等の衣服にある小さな隙間から液体や固体の化学物質が非分子レベルで通過してしまう現象、「透過」とは、化学物質が分子レベルの状態で衣服を通過してしまう現象です。
化学物質の「浸透」を防いでいても、目に見えないところで「透過」し、化学物質にばく露する可能性があるため、使用する化学物質に対して耐透過性能がある素材の防護服や手袋等の保護具を使用することをお勧めしています。
「防護服の知恵.com ケミカルデータベース」では、化学物質のCAS番号や名称等の情報から防護服素材の化学物質に対する透過データを検索・確認することができますので是非ご活用ください。※データの閲覧には会員登録(無料)が必要です。
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終わりに
防護服の選定には、取り扱う有害物質の特性と作業内容の把握が必要不可欠です。防護服には、素材の違いだけでなく、一体型の続服タイプやエプロン・アームカバー・シューズカバー等の部分防護タイプと形のバリエーションも豊富です。作業環境や作業内容に応じて選ぶことが重要です。
防護服選定のチェックポイント!
☑有害物質に対する防護性能がある素材か?
☑作業中もその防護性能が維持できる耐久性がある素材か?
☑安全かつ効率的な作業のために、身体のどの部分を防護する必要があるか?
こちらのページでは、防護服の選び方をフローチャートで分かりやすく解説しています。是非ご活用ください。
ご紹介した素材の製品 掲載カタログ:「防護服総合カタログ」
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