【採用事例】「iPS細胞の可能性を追求し実用化を推進。 世界初のiPS細胞に特化した再生医療の最先端施設。」

客様の声 -Customer Feedback-

京都大学iPS細胞研究所 CiRA 細胞調製施設(FiT)様

 iPS細胞研究所(CiRA)は、世界初のiPS細胞に特化した研究機関として、2010年4月に京都大学に創設された研究所です。

 2007年11月に山中教授の研究グループがヒトiPS細胞の樹立成功を発表したことを受け、翌年1月に日本のiPS細胞研究を推進する中核組織として、物質-細胞統合システム拠点内にiPS細胞研究センターを設置。2010年に「iPS細胞研究所」に改組し、運用が開始されました。iPS細胞の画期的な技術を用いた新たな治療法をいち早く提供できるよう、 実用化に向けて日夜研究に取り組んでいます。

 iPS細胞は無限の可能性を秘めた多能性幹細胞で、再生医療におけるその重要な役割に大きな期待が寄せられています。また、病気の原因の解明や難病の創薬などにも有用であると考えられており、京都大学iPS細胞研究所では、開所以来、「iPS細胞の臨床応用」という使命のもと研究活動を行っています。

 再生医療や細胞治療に用いられるヒト由来の細胞や組織は、様々な加工や調製を施した後に、患者の体内へ移植あるいは輸注されます。よって、安全性を含めた高いレベルの品質の担保が必須となり、充分に環境が整備された専用施設の設置や、医薬品や医療機器などと同じレベルの製造及び品質管理が求められます。

 そこで、京都大学iPS細胞研究所で行われている研究活動の内容や再生医療において担う役割、長期目標に向けた取り組みとともに、安全性を担保するためにどのような品質管理に尽力されているのか、細胞調製施設(FiT)製造統括責任者の塚原様にお話を伺いました。


●細胞調製施設(FiT) 製造部 製造統括責任者 特命教授 理学博士 塚原 正義 様

●1986年3月、東北大学理学部生物学科卒業、1988年3月、東北大学大学院理学研究科修了後、キリンビール株式会社・協和発酵キリン株式会社にて、抗体医薬品の製造・研究に従事。2017年10月、京都大学iPS細胞研究所 細胞調製施設に入所。製造部 製造統括責任者に着任し、現在に至る。

●取材実施:2019年6月


【採用事例】「iPS細胞の可能性を追求し実用化を推進。 世界初のiPS細胞に特化した再生医療の最先端施設。」

 

iPS細胞研究所にはどのような研究部門があり、どのような研究が行われているのでしょうか。

 当研究所では、5つの研究部門を設置し、基礎から応用まで一貫してiPS細胞実用化のための研究を進めています。まずは、各部門の役割の概略を次の通りご紹介いたします。

 

●未来生命科学開拓部門

 iPS細胞技術をツールとして活用することにより、分子細胞レベルでの新たな生命科学の分野を開拓。

●増殖分化機構研究部門

 患者さんから提供された細胞をもとに作製したiPS細胞を、患部の細胞へ分化させて治療薬や治療法などを開発。

●臨床応用研究部門

 iPS細胞から様々な細胞を分化させるための誘導方法を確立し、細胞移植治療法についての効果や安全性を評価。

●基盤技術研究部門

 臨床研究用iPS細胞の作製や臨床応用に必要な法規制整備の研究に加え、iPS細胞の共通基盤技術の開発を推進。

●上廣倫理研究部門

 iPS細胞の臨床応用を取り巻く倫理的・法的・社会的な課題の整理やその対処法を検討し、成果を情報発信。

 

 以上、各部門は情報交換をするなど連携を図りながら、専門領域を追究。iPS細胞の臨床応用という使命を念頭に、再生医療の実用化を目指すとともに、日本最高レベルの研究体制と環境の整備など、2030年までの達成を目指す4つの長期目標に向け、取り組みをより一層強化しています。

 

では、iPS細胞治療に寄せられている期待や可能性についてお聞かせください。

 iPS細胞は、様々な細胞に分化することができ、移植治療をはじめとする再生医療で供されるほか、これまでに解明されていない病気の原因を探り、新しい薬の開発などに活用できると考えられています。

 再生医療は、病気や怪我などによって失われてしまった機能を回復させることを目的とした治療法で、iPS細胞から分化誘導した細胞を移植する細胞移植治療への応用が期待できます。現在すでに、当施設で作製したiPS細胞から分化させた細胞が実際に臨床研究に使われています。一方、難治性疾患の患者さんの体細胞からiPS細胞を作製し、患部の細胞に分化させ、その患部の状態や機能がどのように変化するかを研究することにより、病気の原因解明や治療薬の探索などにも期待が寄せられています。

 また、それらの細胞を利用すれば、人体ではできないような薬剤の有効性や副作用を評価する検査や毒性のテストが可能になり、新薬の開発へ多大に貢献することができます。

 

 

【採用事例】「iPS細胞の可能性を追求し実用化を推進。 世界初のiPS細胞に特化した再生医療の最先端施設。」

 

2013年に発足された「iPS細胞ストックプロジェクト」ではどのような取り組みが行われているのでしょうか。

 患者さん自身の細胞からiPS細胞を作製するのが拒絶反応がなく望ましいのは言うまでもありません。細胞にも血液型のように型があり、HLA(Human Leukocyte Antigen:ヒト白血球型抗原)と呼ばれていますが、この型が異なると拒絶反応が起こります。多くの人において拒絶反応が現れにくい特定のHLA型を持つ健康なボランティアの方に細胞をご提供いただき、再生医療用iPS細胞を作製・保存し、必要に応じて国内外の医療機関や研究機関へ迅速に提供できるシステムの構築に取り組んでいます。

 また、このiPS細胞ストックプロジェクトを進めるメリットは、患者さん自身の細胞を使う「自家移植」に比べると、格段に時間も費用も抑えられることにあります。およそ10種類のHLA型を揃えることで、日本人の50%をカバーできるとされており、将来的に、日本人の大半をカバーするiPS細胞の作製を計画しています。

 細胞の作製及び保存は、CiRA内に設置された細胞調製施設(FiT:Facility for iPS Cell Therapy)で行っています。医薬品の製造基準であるGMPに準拠した運用基準を定め、すべての製造工程や品質管理をこの運用基準に沿って実施しています。

 

細胞調製施設として設立されたFiTについてお聞かせください。

 先述の通り、病気や怪我の治療にiPS細胞を使うには、細胞を分化させなくてはなりません。FiTでは、その研究成果を医療の現場へ提供するべく、臨床研究に供給可能な品質の高い細胞の調製を行っています。

 FiTでは、2つの代表的な組織を用いてiPS細胞を作製しています。1つは採血した血液(末梢血)。どなたからでも採れる血液から作ることができます。もう1つは、臍帯血。赤ちゃんのヘソの緒から採取できるため、非常に若い細胞であることから臨床応用に有効です。

 FiTは、品質部、製造部、研究開発部の大きく3つの組織から成り立っています。14室の細胞調製室を保有し、iPS細胞や分化細胞の製造を複数種類同時行うことが可能な多機能施設となっています。医薬品の製造と同等の管理をしながら、並行して製造を行っていくために品質部と製造部が連携し、製造や試験の計画書・SOP(作業標準書)・記録書に基づいて、決められたルール通りに、iPS細胞や分化細胞を製造しています。

 大学での研究活動というと、最先端の基礎研究というイメージかと思います。FiTでは、製造を成功させるための研究=開発研究であり、研究の目標が基礎研究とは異なります。製造部では、計画書に基づいた通りに、細胞を作製しなければなりません。ただ、細胞も我々と同じく生き物であり、細胞毎に特徴・個性(細胞が育つ速度など)があり、常に同じように製造すれば、100%成功するというものではありません。だからこそ製造過程をすべて記録し、細胞や環境の変化を見逃さないこと。この積み重ねは製造研究にとって重要であり、再生医療の新たな発見につながる可能性を秘めているとも言えます。

 

CPC(セルプロセシングセンター)を所有するFiTの安全対策はどのように行われているのでしょうか。

 安全対策には2つの観点があります。1つは製造する細胞の安全性、つまり、汚染や混同が無いこと。2つ目は作業者の安全性。ヒト由来の細胞も治療に応用するためには、医薬品と同様のガイドラインにて安全性と高い品質を保証する必要があります。当施設では開設以来、医薬品の製造管理及び品質管理に関する基準であるGMPに則って、施設の管理を行っています。

 施設内には、細胞培養室(クリーンルーム)、液体窒素タンクを完備した細胞保存室、EOG殺菌室、試験検査室、原料倉庫などを備えています。

 当施設の特徴の1つとして、細胞培養用のアイソレーターと安全キャビネットをそれぞれ保有していることが挙げられます。無菌性に優れたアイソレーターと操作性に優れた安全キャビネットを使い分けることで、様々な細胞培養作業に適した環境で製造を行うことが可能です。作業内容によって清浄区域を分け、区域ごとに規格化するとともに、作業者の動線も一定の規準を設けて管理することで、汚染や混同を防止しています。各室内の温湿度・室圧・パーティクル数など、施設内環境は、管理室のモニタリングシステムによって24時間監視を実施。作業者の作業状況も遠隔カメラでモニタリングし、作業環境の適格性だけでなく作業内容についても統括して管理し、安全性の確保に努めています。

 

CPCの安全性を担保した運用において、重要と考えるのはどのようなことでしょうか。

 最大限排除しなければならないのはヒューマンエラーだと考えています。取り扱う細胞組織は極めて貴重な素材であり、塵や埃、病原体やウイルスといった異物が一切入り込まないようにした管理は必須です。さらに、細胞製造時の取り違えなどを防ぐために、細かなルールを決めることと同時に、保存・保管時には固有のラベルシステムで管理しています。これはクリーンルーム内に持ち込む試薬の管理にも適用。ソフトとハードのダブルチェックにより、運用時の信用性向上に努めています。また、作業従事者が担当する業務実技についても文書教育と実地訓練の両面でトレーニングを実施し、しっかりと技術を習得したうえで業務に就いてもらいます。

 CPCではエリアごとに適した着衣を規定し、通常エリアにおいても低発じん性の作業衣に着替えますが、CPC内への入室には汚染拡散防止に適切なガウニングがとても重要です。ただ、ガウニングの手順は予想以上に困難なこともあり、クリーンルームへの入退室においてはナレッジマネジメントを構築。入室前の手洗いから、更衣手順、臨床培養設備の操作、退室までの流れを動画編集した教材で、業務技術を習得してもらっています。このシステムを導入することで、個人差を解消し、作業の均一性やレベルアップを図っています。

 

ディスポーザルタイプの無じん衣を選択されるメリットをお聞かせください。

 ディスポーザルの無じん衣は、在庫状況や安全性の管理が容易であることが最大のメリットです。洗濯・滅菌して使う場合、頻回使用による劣化は否めないうえ、自分たちで適格性・安全性を保証しなければならず、洗浄のバリデーション(検証)などに手間がかかります。また、血液などのヒトの組織を扱うため廃棄可能であることは、安全性や環境面でも安心です。

 なお、廃棄物の規準が厳しくなっている昨今、CiRA及びFiT内での廃棄物の搬出手順や動線は徹底管理されています。京都大学内にも規準がもうけられ、当施設もその規準に基づいて行っています。

 

 

【採用事例】「iPS細胞の可能性を追求し実用化を推進。 世界初のiPS細胞に特化した再生医療の最先端施設。」

 

無じん衣へのご要望などがあればお聞かせください。

 当施設では開設以来、クリーンルームでの作業時にタイベック®アイソクリーン®を採用してきました。採用理由は、使いやすさや耐久性はもとより、安定供給の面で信頼をおいているからです。施設を監督する立場としては、施設面の安全性と作業者の安全性や衛生管理の両面に配慮しなくてはなりません。CPC内では、無じん衣に加え、ゴーグルや手袋で全身を覆って、緻密な作業を行わなくてはなりません。作業者には、息苦しさや暑さといった負担がかかります。また、サイズがフィットしない場合も同様です。無菌性を高め、発じん性を抑えることに加え、着心地や着やすさの向上について努力していただければと思います。

 さらに要望するなら、コスト面についてです。研究活動に費やすコスト軽減への工夫を企業の皆さんにもご協力いただければ、最終的には提供する製品(臨床応用細胞)価格に反映します。iPS細胞の実用化を目指して、共に取り組んでいただければと切に願います。

 


採用製品

CPC施設内の防護服として、デュポン™タイベック®アイソクリーン等を着用いただいています。

タイベック®アイソクリーン®は、高密度ポリエチレンの連続極細繊維に熱と圧力を加えて結合させてつくられた防護服用素材タイベック®を生地に使用した無菌処理可能な衣料です。

• デュポン™タイベック®アイソクリーン® IC253CS (カバーオール)

• デュポン™タイベック®アイソクリーン® 9820 フード&マスク

• デュポン™タイベック®アイソクリーン® IC458CS (ブーツカバー)

※デュポン™、タイベック®、アイソクリーン®は米国デュポン社の関連会社の商標又は登録商標です。


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