【採用事例】「海上のみならず陸上でも。あらゆる事故に対応する化学災害のプロ集団」
お客様の声 -Customer Feedback-
(一財)海上災害防止センター様
一般財団法人海上災害防止センターは、海上などに流出した油や有害物質の防除活動などを行う民間の中核機関であり、本部(横浜市)・西日本支所(神戸市)・九州支所(北九州市)の3拠点体制を整備するとともに、全国84港湾の防災事業者(約170社)と防災活動に関する契約を締結し、全国ネットの防災体制を提供しています。
海上/陸上における危険物の事故対応などを実施している海上災害防止センター様に、業務内容をお聞きしました。
●一般財団法人 海上災害防止センター 業務部 業務課長 山﨑 亮平 様/業務課係長 岡﨑 光弘 様
●取材実施:2022年4月
海上災害防止センターでは、どのような業務を行われているでしょうか?
四方を海に囲まれた我が国においては、漁業・交通・レクレーションなど様々な形態で「海」が利用されており、ひとたび、船舶や臨海部の石油化学工場から海上に油や危険物が流出すると、環境だけでなく社会や経済など多方面に影響が出る可能性があります。このため、海上災害防止センターでは、被害を最小限にとどめ早期に原状復旧するため、事故を起こした原因者の代行者として、危険物の回収などの防除活動等を提供しています。
また2013年に民営化されたことに伴い、近年では道路上やコンテナヤード・一時保管施設内・内陸部に立地する危険物製造施設での陸上事故に対応するサービスも展開しています。
海上での危険物の防除活動では、どのようなことを意識されていますか?
敵を知らなければ防除活動はできない
危険物は、物質毎に引火性・腐食性・毒性などの様々な危険性があるとともに、海上に流出した際の物質の挙動は千差万別なので、まずは漏洩した危険物の情報を十分に把握することが大切です。
例えば、航行中の危険物タンカーから貨物の「水酸化ナトリウム」が船上及び海上に流出した場合、水酸化ナトリウムの固有の特性(強い腐食性・水溶性・揮発しにくいなど)を把握し、それに対応できる保護具を装着して防除活動を実施する必要があります。また、海洋への影響を評価するため、海水のモニタリング調査などを行います。
このように、様々な危険性や有害性を有し、挙動が異なる危険物の防除活動では、“当該危険物=敵”の情報を把握し、「安全」に防除活動するためには、どのような防護服を選択・使用するのか、事故現場で慌てないよう、事前に確認・準備しています。
国際標準の防除活動を意識
船舶からの油の流出事故に伴う油濁補償については、船舶所有者等のP&I保険によって賄われますが、防除活動も無手勝流ではその費用は補償されません。そのため、当センターが防除活動を実施する際には、国際標準の防災活動を意識しています。
危険な業務に従事する方(契約事業者など)への教育訓練について教えてください。
危険物の防除活動は、まず「自身の安全」を確保することが最も大切であると教育しています。このため、化学防護服などの個人保護装具の着脱装方法はもちろんのこと、物質の危険性に応じた化学防護服の選定方法や汚染された際の除染方法についても訓練をしています。
海上や臨海部を対象とした事故対応サービス(MDSS)の訓練では、どのような点に注力していますか?
海上事故では、原因者だけではなく、地域全体の防災力の強化が必要不可欠
MDSS契約に基づく訓練の目的は、危険物の防除技術・知識の付与や当センターが利用可能な契約者様の資機材を把握することであり、主にフィールド訓練と図上演習の2つがあります。
フィールド訓練は、オイルフェンスの展張など専用資機材の運用技術の習得を目的として、屋外で実施する訓練です。
図上演習は、当センターが用意した想定事故に基づき、流出事故発生時の早期の防除活動に関して、室内でディスカッションする訓練です。海上事故において被害を極小化するためには、いかに初動対応を速やかに実施できるかが重要であり、地域の関係者が共通理解を持つことにより地域が一体となって早期の事故収束が実現することから、図上演習では危険物によって異なる防除活動をリアルに想像し、参加者全員が実際の事故対応のイマジネーションが持てるように、工夫しています。
シナリオを伏せた頭の体操
防災訓練というと、一般的にはあらかじめ決められたシナリオに沿って行っていますが、とかく、訓練内容が形骸化しやすいので、当センターでは、様々なシチュエーションに対応できる事故対応能力を養うため、シナリオを伏せて訓練を提供しています。
化学防護服が実際に役に立った時のことを教えてください。
当センターが行う事故対応業務においては、危険物から身体を保護する化学防護服が必須となります。仮に化学防護服を着用せず、又は、対象物質の耐薬品性能を有していない化学防護服を着用した場合、防除活動中に薬傷を負うことはもちろん、物質によっては命を落とすことも考えられます。過去にトリクロロシラン・イソシアネート・フッ化水素など、毒性が非常に高い物質の事故対応を実施したことがありますが、実施にあたり、充実したパーミエーションデータを有し、品質管理が徹底されている化学防護服があらかじめ準備できているからこそ、作業者は安心して防除活動を行うことができたと考えています。
特に毒性や腐食性が非常に高いフッ化水素(無水)の漏洩確認を行った際は、化学防護服のバリア性能を把握・装着していなければ、業務を遂行できなかったと思います。
もし、化学防護服が準備できていない場合は、どのように対応されますか?
必要な化学防護服が準備できない場合は、防除活動実施者の安全性が確保できないので、事故対応が困難な状況になります。
当センターでは出動要請が入ると、必ず対象物質の危険性、有害性等を確認し、化学防護服のパーミエーションデータと照合した上で保護装具の選定を行っています。化学防護服は危険な漏洩物質にばく露される防除活動実施者が命を預ける最も大事な保護装具の一つであるため、この選定作業はとても重要です。契約企業が保有・管理する様々な物質の事故に対応できるよう、米国環境保護庁(EPA)の基準に沿った3段階の保護レベル(LevelA・B・C)を満たす各種保護装具を常備しています。
化学防護服を着ることで生じる、動きやすさへの制限にはどのように対処していますか?
当センターが使用する化学防護服のなかには宇宙服のような完全密閉型の化学防護服があり、危険性の高い物質でも対応できます。一方で、視界が制限されたり、動きづらくなることから、保護装具を装着した状態であっても確実に作業ができるように、定期的に部内訓練を実施しています。
陸上を対象とした危険物質事故セーフティサービス(HMSSやHAZMATers)関連の出動実態を教えてください。
平均すると年間4~6件程度の出動要請を受けています。最近では陸上事故の出動要請も増加しており、海上事故と陸上事故どちらも同程度の出動頻度があります。
危険物の災害対応をされる専門家として、最後に一言お願いします。
当センターが事前契約を結んでいる船舶や石油化学工場の皆様は様々な安全対策や教育・訓練などを行っておられますが、様々な原因によりどうしても事故は起きてしまいます。事故の被害を最小限にとどめるためには、常に事故は起きるという意識をもって準備対応しておくことが、最も重要であると考えています。比較的小規模な事故や危険性の低い物質であれば、原因者だけで対応できる場合もありますが、大規模な事故や危険性の高い物質については、原因者だけでの対応が困難であり、そのような場合の受け皿が当センターであると考えています。危険を冒して対応しようとすると、二次災害に発展する可能性もありますので、現状の事故対応態勢に不安がある場合には、当センターの各種事故対応サービスを活用していただければ幸いです。
採用製品
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